同じ床屋さんに30年間通っている。
大学を卒業して勤めた故郷の静岡の会社を辞めて、茨城に引っ越してきたときに、たまたま一番近くにあった床屋さん。
住んでいたアパートから歩いて3分ほどの距離にあった。
あれから経営者は3人目となった。
3人目の経営者は、私とも相性が良く、床屋さんを替えないのはそのためだと思う。
私が隣の市へ引っ越しても、車で20分間かけて通い続けている。
床屋さんに通うタイミングは、ぴったり1ヶ月と3週間間隔。
それを30年間続けている。
経営者の方は、青森県出身の60歳代後半の方である。
当初は奥さんと2人でやっていたが、人口減少でお客さんが減ったらしく、今はご主人1人だけでやっている。
30年間も通い続けていれば、散髪中の会話でお互いのことは良く知っている。
彼は、青森の工業高校を卒業して、鹿島のコンビナートに勤務した。
今や日本の著名企業の1つに挙げられる企業である。
コンビナートができた当初の入社1期生だったらしい。
トラブル続きのプラントも2年もすれば安定して、機械のメーターを眺めるだけの毎日になった。
それが嫌で2年間で退職して、床屋の専門学校に通って床屋になったとのことであった。
たまに彼は言う。
あのまま会社員生活を続けていたら・・・。
人生に「もしも・・・」はない。
しかし、違う人生を考えるのもありなのかもしれない。
俺もたまに、人生の選択肢をあちらにしたらと考えるときもある。
それは現在の人生を否定することになる。
今さら人生の軌道修正をすることはできないことは分かっている。
苦しくても今の人生をやり切るしかない。
そう自分に言い聞かせている。