元上司が64歳で亡くなった。
定年退職まであと1年というところであった。
9月の健康診断でステージ2の胃がんが見つかり、11月11日まで仕事をしていた。
11月12日に手術を受けて、13日から17日まで術後のリハビリを続けていたそうである。
18日の朝に容体が急変して亡くなったそうである。
胃がんのステージ2というのはほとんど治るレベルと思っていた。
私が最後に彼と話をしたのは数日前であった。
弊社では60歳が役職定年で、65歳が定年退職。
彼は高知県出身の「いごっそう」である。
曲がったことが大嫌いで上司とよく大喧嘩をしていた。
もともと大阪にいたのだが40歳半ばで転職してきた。
再婚して奥さんと2人暮らし。子どもはいなかった。
もっと出世をする実力も実績もあったのに、上司と仲が悪かったのでトップに上り詰めることは無かった。
彼が役職定年になるときに、社長に私が彼の後釜になるように進言したらしい。
私は彼とまったく交流がなかった。
それなのに私を指名したということは同じ波長を感じていたのかもしれない。
彼のおかげで9年間出世が止まっていた私が昇格できた。
彼と最後に話をしたのは数日前。
定年退職まであと1年だから早期退職を勧めた。
退職金が割増になるからである。
大阪時代に購入したマンションと今のマンションのローンのダブルの返済がまだ残っているとのこと。
だから定年退職後も働きたいと言っていた。
そして、最後は地域貢献の仕事をやりたいと言っていた。
9月に人事異動があったのだが、そのときには彼は希望の地域貢献の部署には異動できなかった。
彼の死の知らせは、出張中に電話で聞いた。
そのときに脳裏に浮かんだのは、彼の「最後に地域貢献の仕事をやりたい」との言葉だった。
彼は亡くなる瞬間に、自分の人生をどう振り返っただろう。
無念の想いがあっただろうか。
そう考えると、自分もやりたいことをやって死にたいと思う。
人生100年時代と言うが、誰もが100歳まで生きることはない。
人間いつ死ぬかはわからない。
やりたいことをやって死にたい。
後悔のない人生にしたいと思った。
彼の冥福を祈って1人で泣いた。